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国立大学法人 東京農工大学
生物の脈動原理を活用した管内乱流摩擦抵抗の画期的な低減技術を開発 NEDOの産業技術研究助成事業の一環として,東京農工大学大学院 工学府機械システム工学専攻の岩本薫特任准教授は,血流の脈動に手掛かりを得て構築した「流れを脈動させ再層流化することによる乱流摩擦抵抗の低減技術」の実証試験に成功し,最大約58%の動力削減効果を達成しました。管路におけるほぼすべての流体を輸送できるほか,天然ガスや水素,二酸化炭素などの気体の輸送にも適用可能で,流体を駆動するポンプの制御方法を変更するのみで簡便にシステムを構築できます。熱と運動量の相似性により,配管への熱損失も大きく減少し,断熱効果も向上します。この新しいシステムが石油,天然ガスのパイプライン輸送や地域冷暖房における冷媒輸送などに導入・普及されれば,管路内のエネルギー消費量のほとんどを占めている乱流摩擦抵抗によるエネルギー損失の大幅な抑制が実現します。
実験装置は,ポンプ,曲がり部,段差から構成され,ポンプの回転数をインバーターで制御,周期的に変化させて脈動流を作成します(左図)。時間の経過に伴い脈動流が発達し,乱れの無い層流へと変化します。その結果,およそ100秒後から流量が増加し,同じ駆動力でより多くの流体を輸送することができます(右図)。 1.背景及び研究概要 現在,石油・天然ガスや地域冷暖房における冷媒の輸送の多くはパイプランといった管内流体輸送しています。欧米ではほとんどがパイプライン輸送であり,長距離輸送間の管内の乱流摩擦抵抗によるエネルギーロスは大きな課題となっています。また例えば一般的なデータセンターでは電力消費の約4割を冷却用空調設備の電力消費が占めていますが,空調設備自体のCOP(注1)が向上してきているものの,さらなる効率化に対する要求が強くなってきています。その際,空調設備の電力消費のうち一定割合を占める,冷媒の管内流体輸送に係るエネルギーの一層の削減が必要です。一般的に,管内流体輸送におけるエネルギー消費量のほとんどは乱流摩擦抵抗が占めており(9割以上),ポリマーや界面活性剤などを添加する方法や,リブレットと呼ばれる微小な突起をパイプ表面に一様に取り付ける手法がありますが,添加手法では液体への添加にしか使えない(気体輸送には適用できない),輸送後の添加剤の除去が難しい,熱交換器へのコンタミの可能性がある,リブレット手法ではゴミが突起に詰まる,配管内の内壁面全面に設置する必要があるため初期コストが高い,などの課題がありました。 そこで,東京農工大学大学院では,生物進化から脈動流の合理性に着目し,管内流体輸送中に発生する乱流摩擦抵抗によるエネルギー損失を抑制する画期的な輸送手法の基礎技術を開発しました。管内乱流の超並列大規模直接数値計算(数値的誤差が無く,流れの支配方程式をそのまま解く手法)と室内実験装置を用いて,脈動の周期・波形パターンを適切に設定することにより,脈動流における壁面摩擦の平均値が定常流の値より60%近く減少する(乱流状態から乱れが全く無い層流状態へと遷移する)ことを世界で初めて発見しました。最適な脈動条件では,緩やかな流速・圧力変化を有するため,既存の配管などへの悪影響が少ないという特徴を有します。熱と運動量の相似性より,配管への熱損失も大きく減少することから,断熱効果も向上します。管路におけるほぼすべての流体輸送に応用が可能であり,幅広い応用分野が期待されます。添加剤を用いないことから,天然ガス・水素・CO2などの気体輸送にも適用が可能です。 現在,実用化に向けては,地域冷暖房での冷媒輸送,天然ガス・石油のパイプライン輸送,ガス・水道などのライフライン輸送,温水などの排熱パイプライン輸送を想定していますが,将来的には二酸化炭素の分離回収後の地中貯留のためのパイプライン輸送,水素輸送・供給のためのパイプライン網などへの応用展開も目指して行きます。 (注1) COPとは,Coefficient Of Performanceの頭文字を取ったもので,消費電力1kWあたりの冷却・加熱能力を表した数値のことです。日本語では動作係数・成績係数と呼ばれています。冷房機器などのエネルギー消費効率の目安として使用されています。 2.競合技術への強み この技術には,次のような強みがあります。
3.今後の展望 今後,東京農工大学大学院では,この脈動性を用いた乱流摩擦抵抗の低減技術の実用化に向けて,特に(1)曲がり管や分岐管といった継ぎ手類の影響,(2)流量センサへ与える影響の調査,(3)長距離輸送時の検討,について開発を進めて行きます。地域冷暖房やパイプライン技術を既に保有している,もしくは長距離の流体輸送の技術開発・商品開発に知見や実績を有する(もしくは関心のある)企業・組織などとの意見交換や技術相談,共同開発を提案します。 4.研究者(岩本薫特任准教授)の略歴 1999年 東京大学工学部機械工学科卒業 2001年 東京大学工学系研究科機械工学専攻修士課程修了 2004年 東京大学工学系研究科機械工学専攻博士課程修了 2004年 東京大学・日本学術振興会特別研究員(PD) 2005年 東京理科大学理工学部機械工学科・助手 2007年 東京農工大学大学院工学府機械システム工学専攻・特任助教授 2007年〜 東京農工大学大学院工学府機械システム工学専攻・特任准教授 5.お問い合わせ先
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